[大会トップページ(日本語)]

2021 MMIRAアジア地域会議/第7回JSMMR年次大会
招待講演

2021年10月30日(土) 14:40-15:50 JST

講演 1:
アジアにおける混合研究法の普及に向けて

講演者:ジョン W. クレスウェル(ミシガン大学)
司会:マリコ H. クレスウェル(関西学院大学)

【使用言語】英語(日本語資料付)

私は混合研究法に 40 年近く携わってきました。この間、混合研究法は世界中に広まっていく様子を目の当たりにしてきました。私の著書は混合法の発展をマッピングしたものだと言えます。米国内と国際的両面で混合研究法がどのように拡大してきたかについて考えてみました。また、各国の混合法の主要な支部や MMIRA の関連団体が立ち上がるのをみてきました。私は、アジアで混合研究法をどのように広めていけば良いかを提案したいと思います。まず、各国の研究を形成する文化的で特有な要因を理解することから始まります。そして、他の国際的な混合研究法の研究者とリンクし、協力することへと発展していきます。さらに、異なる分野の人たちを巻き込むことで発展します。 学術誌やウェビナー、国や財団による研究支援などの普及活動を通じてさらに発展が期待できます。アジア諸国の学者を集めた JSMMR でのセッションなど、すでに進行中の取り組みが基盤になります。英語を母国語としない研究者にも理解できる方法で、混合研究法を紹介することが重要です。以上が、私がアジアで混合研究法を普及させるために皆さんにしていただきたいことです。すべて の答えを持っているわけではありませんが、私の長年の経験を生かし、それを他の混合法研 究者と共有したいと思います。

ジョン W. クレスウェル

ジョン・W・クレスウェル氏(Ph.D.)は、ミシガン大学の家庭医療学の教授であり、ミシガン混合研究法プログラムの上級研究員である。クレスウェル氏は、混合研究法、質的研究、研究デザインに関して、数多くの論文と30冊の書籍を執筆してきた。ネブラスカ大学リンカーン校では、クリフトン寄附講座長と混合研究研究法研究室のディレクターを務めた。また、SAGEのJournal of Mixed Methods Research(JMMR)を創設した。ミシガン大学家庭医学の非常勤教授、ミシガン州アナーバーにある退役軍人局医療サービス研究センターのコンサルタントを務めてきた。シニアフルブライト奨学生として2008年には南アフリカに、2012年にはタイを訪問た。2011年には、米国国立衛生研究所の「健康科学における混合研究法のベストプラクティス」に関するワーキンググループを共同で主導した。2013年にはハーバード大学公衆衛生大学院の客員教授を務めた。2014年には、Mixed Methods International Research Association(MMIRA, 国際混合研究法学会)の設立会長を歴任。2015年、ミシガン大学家庭医学科のスタッフに加わり、ミシガン混合研究法プログラムの共同ディレクターを務める。2016年、南アフリカプレトリア大学から名誉博士号を授与される。2017年、アメリカ心理学会の質的・混合法研究に関する「基準」を共著で作成。2018年には「質的探求と研究デザイン」に関する著書(シェリル・ポス氏との共著)が、米国の教科書・学術著者の2018年McGuffey Longevity賞を受賞。現在、日本の芦屋とハワイのホノルルに住居を構えている。
[大会トップページ(日本語)]
2021年10月31日(日) 9:40-10:50 JST

講演 2:
変革の担い手としての看護師:混合研究法を用いた有意義なインパクトへの示唆と機会

講演者:ミシェル・ニコルズ(サウスカロライナ医科大学)
司会:河村洋子(産業医科大学) & 亀井智子(聖路加国際大学)

【使用言語】英語(日本語訳文有)

最近の数年間、世界中の人々が大きな変化に直面している。COVID-19 パンデミックにしても、世界中で起きている社会的、政治的、環境的、経済的な大変化など、看護師は個人、家族、地域、集団のあらゆるレベルの健康の最前線に立っていると言える。看護師の役割は、地理的境界、政治的・宗教的所属、教育的・経済的背景、そして世代を超えて、多様な人々との仕事のあらゆる側面を網羅する。控え目でありながら重要である役割のため、看護師は有意義でポジティブな影響を生み出す可能性のある変化を生むことができる。本講演では、今日の国際社会の中心にある出来事やニーズに焦点を当て、看護師が有意義な変化に影響 を与えるための混合研究法による研究を紹介する。現在起こっている出来事や、混合研究法を用いた自身の臨床研究の例を紹介し、その可能性と課題を明らかにする。また、米国の既存の看護カリキュラムにおける混合研究法の教育トレーニングについても議論し、世界的 に拡大する看護科学者のニーズに応えるための提言もしたい。

ミシェル・ニコルズ

ミシェル・ニコルズ氏(Ph.D, RN)は、米国サウスカロライナ医科大学の助教で、グローバルヘルスの看護科学者です。看護学博士課程の学生を指導する学術的な役割に加え、米国および世界の低・中所得国の恵まれない人々を対象に、テクノロジー、コミュニティベースの参加型手法、自己管理戦略、混合方法論デザインを用い、慢性疾患、健康格差、医療へのアクセスに取り組む活発な研究プログラムを展開している。 ニコルズ氏は MMIRA 会長であり、サウスカロライナ臨床トランズレーショナル研究所によるコミュニティ・エンゲージド・スカラープログラムのディレクターを務める。また、生命倫理学者としての訓練を受けており、国内外の複数の委員会に参加して、複数の領域や地域における研究の倫理的実施に関する専門知識を提供している。
[大会トップページ(日本語)]
2021年10月31日(日) 11:00-12:10 JST

講演 3:
混合研究法における分析手法の進歩

講演者:ティモシー・C・ゲッターマン(ミシガン大学)
司会:成田慶一(京都大学)

【使用言語】英語(日本語資料付)

統合的な分析は混合研究法の特徴であり、意味のある統合を実現するための方法やツールは増えている。ジョイントディスプレイは、質的研究と量的研究を統合するための有望な視覚的手段であり、統合を表現するために、原稿、論文、学位論文、混合研究法の報告書の中の表、マトリックス、図、画像、その他の視覚的なものを用いる。本講演では、統合という認知的に困難な作業を、ジョイントディスプレイによってどのように促進することができるかを議論する。特に、統合的な混合法分析を行い、メタインファレンスを行うためのジョイントディスプレイの使用に焦点を当てる。さらに、図、画像、およびダイアグラムなどの追加の視覚的表現を組み込んだ革新的なジョイントディスプレイについても検討する。最後に、ジョイントディスプレイ作成のベストプラクティスを紹介する。

ティモシー・C・ゲッターマン

ティモシー・C・ゲッターマン(Ph.D.)は、混合研究法を専門とする学際的で応用的な研究方法論者である。彼の方法論の目標は、混合研究法の厳密な方法、特に質的研究と量的研究を統合する戦略を発展することである。米国国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受け、医療サービス、コミュニケーション、シミュレーショントレーニングを改善するためのインフォマティクス技術を研究している。また、財団の助成金やNIH 健康科学のための混合研究法トレーニングプログラムを通じて、研究手法の能力開発にも積極的に取り組んでいる。Educational Research: Planning, Conducting, and Evaluating Quantitative and Qualitative Research の第 6 版を John W. Creswell 氏と共同執筆した。
[大会トップページ(日本語)]
2021年10月31日(日) 12:20-13:30 JST

講演 4:
修辞的分析的構造を混合型研究に用いる:東アジアにおける「起承転結」の世界観

講演者:八田 太一(静岡社会健康医学大学院大学)
司会:マイク D. フェッターズ

【使用言語】英語(日本語資料付)

混合研究法では量的データと質的データを用いることで、一連の現象を事例として記述することができる。事例を分析し記述することの一つの目的は、その経時的変化を明らかにすることであるが、データに基づいてそれを網羅的に記述したり、異なる経時的変化の事例を統合的に分析することには様々な注意書きが必要になる。一方、事例にはその場で共有されている言語や文化があり、これらは、時系列を描写する研究者の認識論と暗黙裡に結びついている。そして、研究者が経時的変化を分析し記述する際に、その言語の修辞法を活用することで、複数の事例がもつ時系列を包括的に提示することが可能になる。質と量とを統合させる研究においては、修辞的分析構造は質的分析の役割と手続きを明確にしてくれる。本発表では、東アジアで共有されている一つ修辞法である「起承転結」を混合型研究に適用した研究を紹介し、混合型研究をデザインする上で考慮すべき方法論上の課題を示したい。

八田 太一

静岡社会健康医学大学院大学 講師、混合研究法と医療倫理学を担当。2019 年医学博士号取得(京都大学)、博士課程では、がん治療をはじめるためのインフォームド・コンセントの参与観察をおこない、医師と患者の対話の変化を描いた。同氏の学位論文は Journal of Mixed Methods Research に収録された。健康科学、医療社会学、医療倫理、文化心理学の領域に関心があり、量的研究、質的研究、混合研究法を用いる。日本に住む学生や研究者が自分たちの言葉で研究方法論を体得するようになるために、混合研究法の主要な概念を日本に導入している。 同氏は、2015 年より日本混合研究法学会理事、2019 年より国際混合研究法学会理事を務めている。また、Foundations of Mixed Methods Research(C. Teddlie & A. Tashakkori, 2nd. ed., 2008)『混合研究法の基礎: 社会・行動科学の量的・質的アプローチの統合』の監訳者の一人である。
[大会トップページ(日本語)]