[大会トップページ(日本語)]

2021 MMIRAアジア地域会議/第7回JSMMR年次大会
パネルディスカッション

2021年10月30日(土)13:20-14:30 JST

座長・企画:
抱井尚子(青山学院大学)
パネリスト:
マイク D. フェッターズ(ミシガン大学), 亀井智子(聖路加国際大学), ドミニック・フローチ (ウィーン大学)

パネルディスカッション:「COVID-19時代の混合研究法」

座長・企画:抱井尚子(青山学院大学)

 今年度の大会テーマ「社会的大変動時代の混合研究法」は、混合研究法(MMR)と方法論の革新的力を活用することで、COVID-19 パンデミックに起因する社会的変化の複雑性に取り組むものである。
 Journal of Mixed Methods Research(SAGE)の共同編集者である Michael Fetters 博士と José Molina-Azorin 博士は、”COVID-19 and Novel Mixed Methods Methodological Approaches During Catastrophic Social Changes”(「COVID-19 と大規模な社会変化における新しい混合研究法のアプローチ)」という特集号の論文募集において、パンデミックによる前例のない影響の規模を考慮して、人間科学や社会制度のあらゆる分野で MMR を活用するよう働きかけた。そして、世界の MMR コミュニティがもつ創意工夫と、パンデミックがもたらした方法論の革新を紹介するような論文を募った。その結果、世界中のさまざまな分野の研究者がこの呼びかけに応え、非常に斬新な研究成果が集まった。
 本パネルでは、Fetters 博士が、Journal of Mixed Methods Research の特集号に掲載された論文をレビューし、これらの論文が特集号の目標達成にどのように貢献しているかを紹介する。MMR の第一人者であり、日本混合研究法学会の理事でもある亀井智子博士は、看護分野の混合型研究として、コロナ禍以前と最中に革新的なテレナーシングシステムを使用してい た患者の病の軌跡を調査した事例を紹介する。この論文は、Journal of Mixed Methods Research の COVID-19 特集号に掲載されている。ウィーンからは、国際混合研究法学会(MMIRA) の前会長である Judith Schoonenboom 博士のポスドク研究員であるDominik Froehlich 博士が参加し、COVID-19 パンデミックに関する、ソーシャルネットワーク分析を用いた斬新なMMR 研究事例を紹介する。COVID-19 パンデミックの課題の克服に、MMR 分野における最先端の進歩がどのように寄与するかを、オーディエンスとともに検討したい。

抱井尚子

青山学院大学国際政治経済学部国際コミュニケーション学科・教授。日英両語による数多くの方法論関連の書籍や論文を出版している。また、ジョン・クレスウェル著 A Concise Introduction to Mixed Methods Research やキャシー・シャーマズ著 Constructing Grounded Theory(第 1 版)の翻訳を手がけている。著書『混合研究法入門ー質と量による統合のアート』は、日本人の研究者が日本語で執筆した初めての混合法研究の書籍である。最近では、マイク・フェッターズ博士との共編著『混合研究法の手引-トレジャーハントで学ぶ研究デザインから論文執筆まで』を上梓している。また、創刊以来、Journal of Mixed Methods Research の編集委員を務めている。日本混合研究法学会(JSMMR)初代理事長(2015 年~2017 年)。
[大会トップページ(日本語)]

話題提供 1:
「あなたの COVID-19 にまつわる話を教えてください」:COVID-19 に関する JMMR特集号

マイケル D. フェッターズ(ミシガン大学)

 2020 年 3 月に、Journal of Mixed Methods Research (JMMR)は、COVID-19 パンデミックによる壊滅的なまでの社会変化に対処する新しい方法論的アプローチに関する特集号を組むことにし、論文を募集した。パンデミックによってあらゆる社会制度が機能しなくなった。COVID-19 は全ての人に関連し、個々のストーリーがある。混合研究法の力を活用する必要性が高まっているといえる。2021 年 7 月に刊行したこの特集号では、英国、ソマリア、米国、カナダ、香港、日本で実施された 7 つの革新的な混合研究法による研究を紹介した。研究者の専門分野は、国際政治学、公衆衛生学、教育評価学、教育心理学、生命科学コミュニケーション、家庭医学、情報科学、看護学、呼吸器学、経済学、運動学、スポーツ・レクリエーション学など多岐にわたる。これらの研究は、SMS ラジオメッセージング、遺伝学研究、ソーシャルメディア、複雑性理論、遠隔医療、計算機研究、テキストマイニング、自然言語処理などを用いたデジタル分析法を使用または統合した、革新的なものである。特集号の著者は、複雑性理論と「複合的混合法」デザイン、縦断的混合法ケーススタディ、方法論的ブリコラージュや「アジャイル混合法」を用いて革新を示してい る。この画期的な特集号は、COVID-19 をはじめとする甚大な課題に取り組むための希望の光として、混合研究法の強みと方法論の進展を紹介している。

マイケル D. フェッターズ

マイク D. フェターズ氏(MD、MPH、MA)は、ミシガン大学の家庭医療学教授であり、混合研究法プログラムのディレクターである。オハイオ州立大学で医学博士(MD)、ノースカロライナ大学チャペルヒル校で公衆衛生学修士(MPH)、ミシガン州立大学で修士号(MA)をそれぞれ取得している。フェターズ博士の主な研究テーマは、医療上の意思決定における文化の影響、がん患者とのコミュニケーション、医療サービス研究。質的研究と混合法研究においては、特に混合研究法における統合と応用を探究する。また、Journal of Mixed Methods Research(JMMR)の共同編集長。著書に『Mixed Methods Research Workbook』(Sage, 2020)がある。抱井尚子氏との共編著抱井尚子氏との共著『トレジャーハントで学ぶ混合研究法-混 合型研究論文の執筆と査読のポイント-』(遠見書房、2021 年 4 月)が発売中。
[大会トップページ(日本語)]

話題提供2:
COVID-19 パンデミック禍の慢性呼吸不全在宅療養者の病みの軌跡を理解するための完全な縦断的混合法ケーススタディ(FLMM-CS)アプローチ

亀井智子(聖路加国際大学)

 本高齢社会では、高齢者の多くが慢性疾患などの長期的問題を抱えている。慢性疾患をもつ人々に看護を提供する際、看護師は量的(QUAN)・質的(QUAL)両者の視点によるアセスメントを行い、時間経過とともに変化する身体的・心理的状態の両者を評価・理解する必要がある。COVID-19 感染拡大により、慢性疾患をもつ人々は日常生活の活動制限を余儀なくされ、それが心理的問題をも引き起こしている。しかし、日本の医療制度下では、在宅ケアを毎日提供することは難しく、看護師は在宅療養者を十分にフォローアップすることができていない。慢性疾患高齢者へのきめ細かいアセスメントによる看護ケアのために、亀井ら(2021)は「完全な縦断的混合法ケーススタディ(FLMM-CS)デザイン」を開発した。これにより、看護師は、高齢者の継続的なQUAN およびQUAL データを繰り返し統合・分析することができる。本シンポジウムでは、このデザインを紹介し、QUAN・QUAL データを縦断的に統合し、複数の方法論的アプローチを組み合わせて、医療や他分野の現象を探求する方法論的アプローチをについて説明する。

亀井智子

現職は聖路加国際大学大学院老年看護学・教授。前 聖路加国際大学 WHO 看護開発協力センター長 PCC 実践開発研究部長・前 日本混合研究法学会副理事長。現在は、日本在宅ケア学会理事長・聖路加看護学会理事長・日本混合研究法学会理事・日本看護科学学会理事・日本老年看護学会理事・日本遠隔医療学会運営委員・日本地域看護学会誌編集委員・日本世代間交流学会理事・副編集委員長他を務める。主な研究領域は、混合研究法を用いた慢性疾患在宅療養者への在宅モニタリングに基づくテレナーシング開発と評価、世代間交流支援と評価など。在宅ケアにおける慢性疾患管理とケアの質保証の研究に長らく従事しつつ、混合研究法の普及に務めている。
[大会トップページ(日本語)]

話題提供3:
移り変わるネットワーク:COVID-19 のレガシー

ドミニック・フローチ(ウィーン大学)

 ソーシャルネットワークに関する研究は、過去 20 年間に急増した。膨大な数の有用な概念や理論が生み出され、それらが同時に驚異的な数の実証データや高度な研究手法によって裏付けられてきた。膨大な数の有用な概念や理論が生み出され、それらは同様に驚異的な数の実証データや高度な研究手法によって裏付けられてきた。しかし、COVID-19 とその拡散に対抗するための政策は、新たな社会的ルールを生み出した。パンデミック以前の社会的ネットワークに関する知見は、パンデミックの最中、パンデミック収束後の世界にどれだけ通用するのか。本講演では、この疑問を探り、今後の研究の道筋を示したい。

ドミニック・フローチ

ドミニック・フローチ氏は、オーストリア・ウィーン大学の研究者である。研究テーマは、混合型のソーシャルネットワーク分析と、インフォーマルな学習プロセスの調査研究である。
[大会トップページ(日本語)]